ひょうたんからスキャナ

「はがきスキャナがあるけど、要りますか?」と突然友人がいってきた。はがきスキャナ? そんなものがあるの?と詳しい人に聞いてみた。すると、「3年前にいったじゃないですか。あなたが要らないって言うから捨てちゃった」と叱られてしまった。 骨董ジャン…

伊兵衛流を絶やすな

本橋成一氏の写真展「上野駅の幕間」をみた。素晴らしいの一語だ。われわれの年代が覚えている上野駅は、まさに混沌だった。その混沌の中で日々展開された人間ドラマを、本橋氏のレンズはしっかり捉えていた。 弁当を持って上野駅に通ったのだそうだ。「どこ…

大判の敵

何も書かずにさぼっている間に時間ばかりが経つ。昨年後半は考えさせられる写真展がいくつかあった。9月の「TOKYO 8X10写真展2013」と10月の日大芸術資料館「デジタル以前」、ほかにいくつかの中判・大判、デジタル写真展もあった。機材や感剤は違っても、共…

スキャナカメラ1周年

半年間「写真師」をさぼっていたが、スキャナカメラの実験はずっと続けていた。この間にわかった諸々をご報告しよう。あまりにも休みが長かったので、いささか季節外れだが、まずは2月の雪の体験から。 雪の降り始めは粒が大きい。何気なく見ているうちに、…

見る人か撮る人か

東京都写真美術館で写真展「機械の眼 カメラとレンズ」の内覧会があった。学芸員が作品を解説してくれる。友の会の催しだが、いつも盛会である。なかで女性がデジカメで撮っていたので、私も1枚撮った。と、その女性が「撮影禁止です」という。記録を撮って…

スキャナのあと先

実際に手がけてみると、スキャナカメラは思っていた以上に面白い。画質でいえば、CCDやCMOSとは似て非なるものといってもいいほどだが、本来のスキャナが想定していない使い方をしているのだから、これは仕方がない。それよりむしろ、従来のフィルム大判では…

コンピュータとだまし合い

真っ先に向かったのは新宿駅の西口構内、交番の前に広がるコンコースだった。初めてのスキャナカメラだ。ここで以前、バイテン(8x10インチ)でダゴールを試したことがあって、スローシャッターで動き回る人たちが半分消えてしまうのが面白かった(写真右)…

写真師たちの輝き

知人からのメールに「維新の志士の写真」の真贋を問われたという話があった。ホームページのアドレスがついていたので、つついてみると、見事な集合写真が現れた。まげを結って刀を持った武士たちが、2人の外国人を囲んでいる群像だ。総勢46人。素晴らしい…

デジタルとハサミは使いよう

きょうは大判を離れて、デジタルのありようを考えてみたい。 Pinterestという名前を経済誌の記事で読んだその日に、facebookの友だちがそれを使っていたので驚いた。自分で撮った写真、ネットで見つけた気に入った写真を、ネット上にピンナップして、だれで…

湿板写真はナゾだらけ

古い写真の展覧会を見ると,必ず何らかの発見があって、しかも有無をいわせぬ力量の差を見せつけられて、打ちのめされた気分で帰ってくることが多い。今回もそうだった。東京都写真美術館の「ストリート・ライフ」。サブタイトルが「ヨーロッパを見つめた7人…

驚異のスキャナおじさん

何よりも、本気度がすごかった。横浜の中区民センターの一室。テーブルにずらりと並んだA3,A4のモノクロ・プリントは、全部スキャナカメラの撮影だ。しかも部分伸ばしもあって、スキャナで問題になるシマ模様も拡大してある。撮影レンズもカメラもスキャナ…

大判カメラのへそ

スキャナカメラのワークショップは実に面白かった。なかでも愉快だったのはレンズのとっかえひっかえである。バックがデジタルだから、撮影結果はリアルタイムでスクリーンに出る。ひょいとレンズを取り替えては、また1枚。はい、次のレンズはこれこれと、小…

好きこそものの上手なれ

仲間内では「ムさん」で通っている。とにかく多才で、鉄道模型は家の中にジオラマまで作っているとか、工作は金属・木工・塗装・配電、何でもござれ。本物の鉄道も大好きで、廃線になると聞けばどこまででも乗りに行く。SLの撮影ではプロもはだしという話で…

雑巾がけは楽し

前回の「芸術写真」で触れた「雑巾がけ」というヤツ。およそいまの写真とはほど遠い画像が、やっぱり気になる。芸術する気なんかさらさらないし、ピクトリアリズムといっても、せいぜいがソフトフォーカス・レンズの写りが気になる程度なのだが、自分の写真…

写真はどこまで芸術か

東京都写真美術館の「芸術写真の精華」展は、久しぶりに写真を考える機会になった。サブタイトルが「日本のピクトリアリズム 珠玉の名品展」とあるから、いわずとしれた、日本の写真史に残る「あの時代」の作品展である。 同館の友の会員向けの内覧会があっ…

フィールドカメラのぬくもり

古い写真だが、全日本クラシックカメラクラブ(AJCC)の写真展で、大いに受けた1枚だ。タイトルが「なに、また買ったの?」だった(右)。クラカメ三昧の会員たちは、だれでも奥方の目が怖い。これも、買ったばかりのナーゲル・ピュピレ(エルマー付でしたよ…

出よ! デジタルのダゲール

きょうは大判の未来を語ろうか。いまやカメラはデジタル全盛で、究極の便利・簡単が達成されて、銀塩仲間も大方デジタルにいってしまった。むろんデジカメは記録装置としてはたいしたもので、このページでも大いに使っている。というより、デジタルでないと…

奇跡!蘇った乾板

いつも刺激的な話を持ち込んでくる城靖治さんが、「ポストカードの乾板を手に入れました」という。ポストカードは、その名の通りハガキに使ったもので、イギリスから始まってアメリカでも大陸でも、カメラはときどき見かける。しかし、フィルムがないのでど…

気を写す

銀座に今もある有賀写真館の創業者、有賀乕五郎(とらごろう)の「気を写す」という話がある。写真館を訪れたところ、有賀が「今日はお顔の色がすぐれないようですから、差し支えなければ、日をあらためた方が‥‥」といった。そこで、別の日に顔を出したら、…

四面楚歌

ヨドバシカメラで、キャビネの現像を頼もうとしたら、「4x5(インチ、以下同じ)より大きいものは受けてません」という。「何いってんだ。あそこの棚にあったフジのフィルムだよ。こないだまで現像を受け付けていたじゃないか」といったのだが、現像所に電話…

殿様は写真がお好き

「朴多瓦刺非」。これ読めますか? 幕末の昔、尾張藩14代藩主徳川慶勝(よしかつ・写真下)が記したメモに出ていたものだ。答えは「ポトガラヒイ(photography)」、そう、写真のことである。といってもまだ明治になる前だから、当然湿板写真だ。これを徳川…

語りかける写真

1枚の写真に目が止まった。ANA(全日空)のCMだ。テレビでは、「たった2機のヘリコプターから出発した小さな民間航空会社。それが、私たちANAのはじまりでした」とモノクロ動画から始まるが、一瞬だけスチル写真が出る。これが実にいい写真。新聞広告であら…

へそ曲がりとわがままの果て

「え? 水晶のレンズ?」。初めて聞いたときは、まさかという感じだった。物知りに聞いてみると、ちゃんとあるんだと。「水晶って溶けるの?」「珪石だからね」「フーン」といったところで、わかったようなわからんような。 ピントがキリッとしたのが写真の…

昔の写真師に敵わない

日本カメラ財団であった古写真を読み解くという催しに出て、驚いた。200人くらいは入るホールがほぼ満員なのだ。大半はお年寄りだったが、中に若い男女の姿もある。明治から大正期の銀座、京橋から築地にかけての写真を、現在の様子を念頭に置きながら、解説…

大判で何が撮れるか

写真展を観ていると、「あ、これ大判でも撮れるな」と思うことがしばしばある。いつも大判マインドなので、そういう目になってしまったらしい。あらためて考えるまでもなく、大判ではスナップや決定的瞬間みたいなものは無理だが、風景、静物、肖像写真の多…

ベス単遊びは病気か

植田正治に、ベス単で撮った作品群があって、これがなかなかいい。植田といえば、鳥取砂丘での一連のコンポジションが浮かぶが、ベス単の作品では、素直にレンズが作り出す独特の効果を楽しんでいる。おそらく「ベス単フードはずし」である。 植田は若くして…

さがみ野のアンソニー

「厚木の『かとう写真館』を取材してみませんか」と誘いを受けたのは2月の初めころだった。小田原のカメラマン西山浩明さんからである。加藤芳明さんを紹介してくれたのも西山さんで、何度か撮影会やだべり会を重ねていたが、加藤さんがどんな写真を撮ってい…

禁じ手は自由の証

大判を始める人は普通、ナガオカとかにフジノンやニッコールをつけたりしてスタートするものだ。レンズにはむろんコパルやコンパーのシャッターがついていて、概ね正しい露出が出せる。あとは、何を撮るかだ。そう難しいことではない。 わたしは少し違った。…

バイテン事始め

中判から4x5、5x7と進んできた若い友人が、「中古カメラ市で8x10(インチ、以下同じ)のホルダーを買いました。どっかにカメラありませんかぁ?」といってきた。このご時世に、なんとまあ物好きなことよ。 といってもこの男、秋葉原で安いデジカメを掘り出し…

手札の命脈

富士フィルムがイギリスサイズのキャビネと手札の製造をやめたというので、友人があわててキャビネを注文したと聞いた。ああ、とうとう来るべきものか来たか、と寂しい思いになった。こちらも心配になったので、聞いてみた。 すると事実は、やめたのは「11x1…