2010-01-01から1年間の記事一覧

四面楚歌

ヨドバシカメラで、キャビネの現像を頼もうとしたら、「4x5(インチ、以下同じ)より大きいものは受けてません」という。「何いってんだ。あそこの棚にあったフジのフィルムだよ。こないだまで現像を受け付けていたじゃないか」といったのだが、現像所に電話…

殿様は写真がお好き

「朴多瓦刺非」。これ読めますか? 幕末の昔、尾張藩14代藩主徳川慶勝(よしかつ・写真下)が記したメモに出ていたものだ。答えは「ポトガラヒイ(photography)」、そう、写真のことである。といってもまだ明治になる前だから、当然湿板写真だ。これを徳川…

語りかける写真

1枚の写真に目が止まった。ANA(全日空)のCMだ。テレビでは、「たった2機のヘリコプターから出発した小さな民間航空会社。それが、私たちANAのはじまりでした」とモノクロ動画から始まるが、一瞬だけスチル写真が出る。これが実にいい写真。新聞広告であら…

へそ曲がりとわがままの果て

「え? 水晶のレンズ?」。初めて聞いたときは、まさかという感じだった。物知りに聞いてみると、ちゃんとあるんだと。「水晶って溶けるの?」「珪石だからね」「フーン」といったところで、わかったようなわからんような。 ピントがキリッとしたのが写真の…

昔の写真師に敵わない

日本カメラ財団であった古写真を読み解くという催しに出て、驚いた。200人くらいは入るホールがほぼ満員なのだ。大半はお年寄りだったが、中に若い男女の姿もある。明治から大正期の銀座、京橋から築地にかけての写真を、現在の様子を念頭に置きながら、解説…

大判で何が撮れるか

写真展を観ていると、「あ、これ大判でも撮れるな」と思うことがしばしばある。いつも大判マインドなので、そういう目になってしまったらしい。あらためて考えるまでもなく、大判ではスナップや決定的瞬間みたいなものは無理だが、風景、静物、肖像写真の多…

ベス単遊びは病気か

植田正治に、ベス単で撮った作品群があって、これがなかなかいい。植田といえば、鳥取砂丘での一連のコンポジションが浮かぶが、ベス単の作品では、素直にレンズが作り出す独特の効果を楽しんでいる。おそらく「ベス単フードはずし」である。 植田は若くして…

さがみ野のアンソニー

「厚木の『かとう写真館』を取材してみませんか」と誘いを受けたのは2月の初めころだった。小田原のカメラマン西山浩明さんからである。加藤芳明さんを紹介してくれたのも西山さんで、何度か撮影会やだべり会を重ねていたが、加藤さんがどんな写真を撮ってい…

禁じ手は自由の証

大判を始める人は普通、ナガオカとかにフジノンやニッコールをつけたりしてスタートするものだ。レンズにはむろんコパルやコンパーのシャッターがついていて、概ね正しい露出が出せる。あとは、何を撮るかだ。そう難しいことではない。 わたしは少し違った。…

バイテン事始め

中判から4x5、5x7と進んできた若い友人が、「中古カメラ市で8x10(インチ、以下同じ)のホルダーを買いました。どっかにカメラありませんかぁ?」といってきた。このご時世に、なんとまあ物好きなことよ。 といってもこの男、秋葉原で安いデジカメを掘り出し…

手札の命脈

富士フィルムがイギリスサイズのキャビネと手札の製造をやめたというので、友人があわててキャビネを注文したと聞いた。ああ、とうとう来るべきものか来たか、と寂しい思いになった。こちらも心配になったので、聞いてみた。 すると事実は、やめたのは「11x1…

明るく楽しい葬式写真

もうみんなその歳ですよね。なかには70代後半にしてなお「あと30年は生きる」と豪語する強者もいるが、ご本人だって信じちゃぁいまい。 以前、ある人のポートレートを巨大レンズで撮ったところ、家族が見るなり「これで葬式写真はできた」といったという(右…

光り物症候群

なぜそう思ったのかは、よくわからない。昨年暮れ、自由ヶ丘駅前のクリスマスツリーの点灯式で、友人のゴスペル・グループが歌うと聞いたとき、反射的に「あ、これはバルブだ」と思った。 フラッシュバルブ(閃光電球)はストロボとはけた違いの光量で遠くま…

豪快! 大判を目測で撮る

「フォーカス」でならしたカメラマンの福田文昭さんから案内がきて、「藤村一郎さんを囲む会」をやるという。「藤村さん? はて誰だろう?」。聞けば、米通信社のカメラマンとして朝鮮戦争を取材したというのだから、いわば戦後写真の第1世代だ。85歳のいま…